論文抄録

第117巻第11号

平成24年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説

ポリープ状脈絡膜血管症の表現型とARMS2遺伝子多型
櫻田 庸一
山梨大学医学部眼科学教室

ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の眼底所見は,網膜色素上皮下病変と網膜下病変に大別され,時にフルオレセイン蛍光眼底造影検査でII型脈絡膜新生血管(CNV)を呈する.遺伝学的にPCVは,典型加齢黄斑変性と同様に補体因子H(CFH)遺伝子とage-related maculopathy susceptibility 2(ARMS2)遺伝子多型に強く関連していることが報告されている.本研究ではPCVの感受性遺伝子多型ARMS2 A69SとCFH I62Vが,PCVの各種眼底所見(網膜下出血,漿液性網膜剥離,漿液性/出血性色素上皮剥離,classic CNV)と関連するか否かを検討した.その結果,CFH I62V遺伝子多型はいずれの眼底所見にも関連を認めなかったが,網膜下出血,漿液性および出血性色素上皮剥離は,ARMS2遺伝子多型のリスク多型に強い関連を示した.Classic CNVでは両遺伝子多型ともに関連を認めなかった.さらに,PCVの両眼発症者と片眼発症者を比較したところ,両眼発症者では,初発眼発症年齢が有意に若く,ARMS2遺伝子多型のリスク多型の頻度が有意に高かった.
ARMS2 A69S遺伝子多型は,PCVの出血性病変や網膜色素上皮下病変と関連しており,また両眼発症に関連していることが示唆された.ARMS2遺伝子多型の検索は,PCVの臨床的特徴を知るうえで,CFH遺伝子よりも有用であると考えられた.(日眼会誌117:886-892,2013)

キーワード
ポリープ状脈絡膜血管症, 表現型, ARMS2 A69S, CFH I62V
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