正常な網膜血管では,内皮細胞が隣接する細胞と互いに接着して安定な構造を維持している.一方,糖尿病や加齢黄斑変性にみられる血管新生の過程では,血管内皮増殖因子(VEGF)により内皮細胞のシグナル分子が活性化される結果,細胞間接着が破綻して細胞遊走が促進される.それゆえ,細胞内シグナル分子を標的として内皮細胞の遊走を制御し,VEGFと関係なく血管新生を抑制する試みは,新しい治療法の開発に貢献すると考えられる.本研究では,低分子量G蛋白質RhoJが新生血管の内皮細胞に強く発現し,細胞骨格の再編成により細胞収縮を誘導することを明らかにした.さらに,内皮細胞に限局して発現するグアニンヌクレオチド交換因子Arhgef15がVEGFの下流でRhoJを不活化し,網膜血管新生を促進することを示した.RhoJとArhgef15は血管新生阻害療法の新たな標的分子として期待される.(日眼会誌117:903-910,2013)