目　的：多焦点眼内レンズで良好な術後裸眼視力に関与する術前因子を検討する．
対象と方法：対象はアポダイズ回折型多焦点眼内レンズ（SN6AD1）を挿入した167眼．術前角膜乱視が1.0 D未満の症例では2.4 mm耳側角膜切開で行った．1.0 D以上の症例では強主経線4.1 mm角膜切開やlimbal relaxing incisionを行った．術後遠方裸眼視力が1.0以上になる術前因子を単変量解析，多重ロジスティック解析で求めた．
結　果：単変量解析，多重ロジスティック解析ともに，年齢，角膜乱視が検出された．遠方裸眼視力1.0以上になる割合が，70歳以上で有意に低く，術前角膜乱視が1.5 D以上の症例でも有意に低かった．
結　論：我が国でも多焦点トーリック眼内レンズが使用可能になり角膜乱視症例の手術成績が改善されつつあるが，年齢は今後も術後裸眼視力を左右する因子として考慮していく必要があると思われた．（日眼会誌119：846-854，2015）