目 的:ステロイドパルス療法後に浅前房が改善したVogt-小柳-原田病(VKH)の2症例を報告する.
症 例:65歳女性と72歳女性.2例とも両眼の視力低下,頭痛,浅前房を認めた.前房内炎症を認めず,超音波生体顕微鏡(UBM)で両眼に毛様体浮腫,毛様体脈絡膜剥離と隅角閉塞を認めた.1例は眼圧上昇を認め,急性原発閉塞隅角症と診断し左眼水晶体再建術を施行したが,術後に光干渉断層計(OCT)で両眼底に漿液性網膜剥離を認めた.2例ともステロイドパルス療法後に,浅前房とUBM所見は改善し,漿液性網膜剥離は消失した.
結 論:VKHは浅前房と隅角閉塞を伴うことがある.VKHによる隅角閉塞の発生機序として,短眼軸に伴う浅前房と狭隅角に,毛様体浮腫と毛様体脈絡膜剥離によるさらなる浅前房化が加わることが考えられた.浅前房を伴うVKHは急性原発閉塞隅角症と誤診される可能性があり,両者の鑑別にはOCTを含めた眼底検査が有用である.(日眼会誌119:354-362,2015)