論文抄録

第120巻第12号

症例報告

治療抵抗性の感染性角膜潰瘍に対して角膜コラーゲンクロスリンキング併用が有効と考えられた2例
河野 雄亮, 神谷 和孝, 小橋 英長, 五十嵐 章史, 清水 公也
北里大学医学部眼科学教室

目 的:角膜コラーゲンクロスリンキング(CXL)は円錐角膜に対する進行抑制だけでなく,感染性角膜潰瘍に対しても有効とされているが,本邦での報告はこれまでにない.今回我々は,治療抵抗性の感染性角膜潰瘍に対してCXLが有効であったと考えられた2症例を報告する.
症 例:症例1は82歳男性,症例2は76歳女性であり,2症例とも真菌および細菌治療を行うも改善を認めないため,十分なインフォームドコンセントのもとDresden protocolに従いCXLを施行した.治療後2週目より,両症例とも角膜透見性が改善し,その後,潰瘍の縮小と上皮化を認め,感染は鎮静化した.また,術後に角膜穿孔や再感染徴候など重篤な合併症を認めなかった.
結 論:治療抵抗性の感染性角膜潰瘍に対してCXLを併用したところ,角膜透見性の改善と感染の鎮静化を認めた2例を経験した.正確な因果関係は不明であるが,CXLは難治性感染性角膜潰瘍に対して有効である可能性がある.(日眼会誌120:831-836,2016)

キーワード
感染性角膜潰瘍, 角膜コラーゲンクロスリンキング
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