背 景:眼窩原発のMerkel細胞癌について報告する.
症 例:87歳,男性.左眼の球結膜の腫瘤を主訴に来院した.細隙灯顕微鏡検査では,左眼耳側の球結膜に赤色の腫瘤を認めた.フルオレセイン染色にて角膜中央部に上皮欠損を認めたが,眼瞼には異常を認めなかった.Computed tomography(CT)検査およびmagnetic resonance imaging(MRI)検査にて左眼窩内耳側に23×18×17 mm大の腫瘤を認め,所属リンパ節への転移やその他の転移巣は認めなかった.腫瘤生検時の病理所見は,免疫組織学的検討において上皮系,神経内分泌系のマーカーは陽性であり,悪性黒色腫,悪性リンパ腫のマーカーは陰性であった.以上,免疫組織学的所見および病理組織像よりMerkel細胞癌と診断した.腫瘍は手術により耳側球結膜からのアプローチで全摘出し,術後に放射線療法を行ったが,3か月後に耳介リンパ節,副神経リンパ節,頸部リンパ節に転移した.追加で同部位に放射線療法を行ったが,初診から17か月後に腫瘍の全身転移により他界した.
結 論:眼窩原発Merkel細胞癌は非常にまれで進行性であり,経過中に転移を起こしうる可能性がある.(日眼会誌121: 930-935, 2017)