論文抄録

第122巻第10号

臨床研究

全層角膜移植後円錐角膜再発により急性水腫を起こした4症例の前眼部光干渉断層計による検討
藤田 あさひ, 吉田 絢子, 豊野 哲也, 白川 理香, 宮井 尊史, 臼井 智彦
東京大学医学部眼科学教室

目 的:全層角膜移植後円錐角膜再発により急性水腫を来した4症例を検討すること.
方 法:全層角膜移植後円錐角膜を再発し急性水腫に至った4例4眼の臨床経過,前眼部光干渉断層計・角膜形状解析装置を用いて得たデータおよび再手術で得た角膜の病理組織像を後ろ向きに検討した.
結 果:4症例は全例男性で急性水腫発症時の年齢の平均は54.8±5.7歳(平均値±標準偏差),移植施行後急性水腫発症までの期間は平均22.3±4.0年であった.全例でグラフトホストジャンクションの下方周辺部に実質の亀裂が生じていた.3例でDescemet膜剝離を伴っており,それらの症例では前房内空気注入は奏効せず,再度の角膜移植を必要とした.病理検体ではホスト側・グラフト側両方でBowman層の途絶がみられた.Descemet膜剝離を伴わなかった1例では保存的加療で角膜浮腫は改善したが,その後も角膜最薄部の菲薄化は進行した.
結 論:今回の4例では通常の円錐角膜と異なりグラフトホストジャンクションの下方周辺部を中心に急性水腫が生じたことから,グラフト内の変化よりもホスト側の菲薄化進行によるDescemet膜破裂やグラフトホストジャンクションの構造的な脆弱性が関与している可能性が考えられた.円錐角膜に対する全層角膜移植後では比較的高齢になっても円錐角膜が進行しうることを念頭においた経過観察が必要で,特に前眼部光干渉断層計を用いたグラフトホストジャンクションの角膜厚の評価が重要であると考えられる.(日眼会誌122:758-765,2018)

キーワード
円錐角膜, 全層角膜移植, 前眼部光干渉断層計, 再発, 急性水腫
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