論文抄録

第122巻第12号

臨床研究

硝子体手術を施行した硝子体内注射後眼内炎の臨床的特徴と経過
望月 司, 鴇沢 亮, 佐野 公彦, 江本 宜暢, 折原 唯史, 北 善幸, 伊東 裕二, 廣田 和成, 厚東 隆志, 井上 真, 岡田アナベル あやめ, 平形 明人
杏林大学医学部眼科学教室

目 的:硝子体手術を必要とした硝子体内注射後の急性眼内炎の臨床的特徴と経過を検討する.
対象と方法:2010年4月から2017年3月までの間に硝子体内注射後の急性眼内炎に対して,当科で硝子体手術を行った症例の臨床所見を後ろ向きに検討した.硝子体内注射後の眼内炎の臨床的特徴を,同時期の白内障手術後急性眼内炎の症例と比較した.また,同期間内に当院で施行された抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射後における総注射回数での眼内炎の発生率を調査した.
結 果:硝子体手術を行った硝子体内注射後眼内炎の症例は6例6眼であった.原疾患は,加齢黄斑変性が4眼,網膜中心静脈閉塞症が1眼,ぶどう膜炎に続発した黄斑浮腫が1眼であった.薬剤別の内訳は,ベバシズマブが2眼,ラニビズマブが1眼,アフリベルセプトが2眼,トリアムシノロンアセトニドが1眼であった.起炎菌は6眼中3眼(50%)で検出され,メチシリン耐性表皮ブドウ球菌が2眼,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌が1眼であった.臨床所見として前房内フィブリン析出が白内障術後急性眼内炎と比べて有意に少なかった(p<0.01).同期間の当院での抗VEGF薬の硝子体内注射回数は35,860回,眼内炎の発生率は0.008%であった.
結 論:硝子体内注射後眼内炎は,6眼中3眼で培養陽性であった.前房におけるフィブリン形成の割合は,白内障手術後眼内炎と比較し,有意に低かった.(日眼会誌122:912-919,2018)

キーワード
眼内炎, 細菌感染, 硝子体手術, 硝子体内注射, 抗血管内皮増殖因子薬
別刷請求先
〒181-8611 三鷹市新川6-20-2 杏林大学医学部付属病院眼科 井上 真
inoue@eye-center.org