論文抄録

第122巻第12号

症例報告

ステロイドパルス療法が著効した自己免疫網膜症の1症例
出口 英人1)2), 永田 健児1), 関山 有紀1), 中井 浩子1)3), 外園 千恵1)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)町田病院
3)京都市立病院眼科

目 的:自己免疫網膜症(AIR)は,自己免疫機序による視細胞障害を来すまれな疾患であり,有効な治療法は確立されておらず,しばしば治療抵抗性である.今回,発症早期にAIRと診断し,ステロイドパルス療法により著明に改善した症例を経験したので報告する.
症 例:62歳,男性.3日前より視力低下,夜盲を自覚し,京都府立医科大学附属病院眼科を受診した.矯正視力は右0.6,左0.8と低下しており,視野検査で求心性視野狭窄を認め,光干渉断層計(OCT)では網膜外層の不明瞭化,網膜電図では両眼ともすべての成分の著明な減弱を認めた.全身検索を行ったが,悪性腫瘍は検出されず,血清中の抗リカバリン抗体が陽性であったことから,AIRと診断した.来院12日目よりステロイドパルス療法を2クール施行し,その後プレドニゾロン内服を60 mgより開始し,漸減した.治療開始後1週より自覚症状は改善し,視力,視野,OCT所見いずれも著明な改善を認めた.悪性腫瘍の存在は発症後1年間で確認されていない.
結 論:自覚症状出現から受診までの期間が短く,早期に治療を開始できたことで,良好な治療結果を得られた可能性が考えられた.AIRの治療において,早期のステロイドパルス療法は有効である可能性がある.(日眼会誌122:934-941,2018)

キーワード
自己免疫網膜症, 癌関連網膜症, ステロイドパルス療法, 抗リカバリン抗体
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