目 的:全層角膜移植術(PK)後移植片不全(GF)症例に対するDescemet stripping automated endothelial keratoplasty(DSAEK)後に拒絶反応を発症した3例の臨床経過を報告する.
症 例:3症例はすべて男性で,PKの原疾患はそれぞれヘルペス角膜炎,白内障術後水疱性角膜症,外傷後角膜白斑であった.3例のうち2例はDSAEKの前にPKを複数回施行されていた.3例のうち2例はDSAEK時にDescemet膜剝離を行った.DSAEK後の拒絶反応を発症するまでの期間は26か月,14か月,10か月であり,3例とも角膜浮腫および角膜後面沈着物を認めたが,1例は自覚症状がなかった.3例ともPK移植片への血管侵入は認めなかったが,いずれもPK後GFとなるまでに拒絶反応の既往があった.3例とも副腎皮質ステロイドの結膜下注射と点眼回数増加,またはステロイドセミパルス療法で改善したが,1例は最終的に再度GFとなった.
結 論:今回の3例はいずれもPK後に拒絶反応の既往があり,一般的なDSAEK後の拒絶反応に比し反応が強く,PK後の抗原感作がDSAEK後の拒絶反応に影響している可能性がある.PK後GFに対するDSAEK術後では,PK後の拒絶反応の既往に注意して経過観察を行う必要がある.(日眼会誌122:942-948,2018)