論文抄録

第122巻第12号

症例報告

全層角膜移植術後移植片不全症例に対する角膜内皮移植術後の拒絶反応
大本 貴士1)2), 豊野 哲也1), 白川 理香1), 吉田 絢子1), 宮井 尊史1), 山上 聡3), 臼井 智彦1)4)
1)東京大学医学部眼科学教室
2)JR東京総合病院眼科
3)日本大学医学部視覚科学系眼科学分野
4)国際医療福祉大学医学部眼科学教室

目 的:全層角膜移植術(PK)後移植片不全(GF)症例に対するDescemet stripping automated endothelial keratoplasty(DSAEK)後に拒絶反応を発症した3例の臨床経過を報告する.
症 例:3症例はすべて男性で,PKの原疾患はそれぞれヘルペス角膜炎,白内障術後水疱性角膜症,外傷後角膜白斑であった.3例のうち2例はDSAEKの前にPKを複数回施行されていた.3例のうち2例はDSAEK時にDescemet膜剝離を行った.DSAEK後の拒絶反応を発症するまでの期間は26か月,14か月,10か月であり,3例とも角膜浮腫および角膜後面沈着物を認めたが,1例は自覚症状がなかった.3例ともPK移植片への血管侵入は認めなかったが,いずれもPK後GFとなるまでに拒絶反応の既往があった.3例とも副腎皮質ステロイドの結膜下注射と点眼回数増加,またはステロイドセミパルス療法で改善したが,1例は最終的に再度GFとなった.
結 論:今回の3例はいずれもPK後に拒絶反応の既往があり,一般的なDSAEK後の拒絶反応に比し反応が強く,PK後の抗原感作がDSAEK後の拒絶反応に影響している可能性がある.PK後GFに対するDSAEK術後では,PK後の拒絶反応の既往に注意して経過観察を行う必要がある.(日眼会誌122:942-948,2018)

キーワード
角膜全層移植術, 角膜内皮移植術, 拒絶反応
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