論文抄録

第122巻第6号

臨床研究

Zinn小帯断裂例に対するT字型水晶体囊フックを用いた水晶体乳化吸引術と眼内レンズ固定法の検討
谷口 重雄1), 小沢 忠彦1), 大槻 智宏1), 田中 裕一朗1), 塙本 宰1), 島 智香1), 小原 由美1), 谷口 紗織2)
1)小沢眼科内科病院
2)東京歯科大学水道橋病院眼科

目 的:Zinn小帯断裂例に対するT字型水晶体囊フック(CE)を用いた水晶体乳化吸引術(PEA)と眼内レンズ(IOL)固定の手術方法について検討する.
対象と方法:Zinn小帯断裂例に対してCEを用いてPEAを施行した連続症例11例13眼を対象とした.断裂範囲,PEA中の前囊に被われない面積(非被覆面積),合併症,術後の角膜内皮細胞密度減少率(ECL)を調べた.非被覆面積の測定方法は,術中の動画から静止画を取り込み,囊の輪郭と瞳孔縁をトレースし,トレースで囲まれた部分の面積を画像解析ソフトウェアで計測した.
結 果:Zinn小帯断裂の範囲は平均値±標準偏差:152.1±40.7°で,CEを2~5本使用しPEA中に囊を支えた.術中の瞳孔面積に対する非被覆面積の割合は,2.3±2.8%でCE装着前に対して有意に減少した(p<0.001).核落下,硝子体脱出などの術中合併症はなかった.IOLの固定では,強膜縫着は10眼,囊内固定+水晶体囊拡張リング(CTR)は2眼,囊内固定+CTR+囊強膜縫着用のmodified capsule expander(縫着用CE)は1眼であった.ECLは,術後約1年で平均9.8%であった.
結 論:Zinn小帯断裂例にCEを用いた水晶体乳化吸引術は有用である.眼内レンズの固定は断裂範囲と残存したZinn小帯脆弱度に応じて,強膜縫着,CTRと縫着用CEを用いた囊内固定を選択することが望ましい.(日眼会誌122:435-443,2018)

キーワード
Zinn小帯断裂, 水晶体乳化吸引術, T字型水晶体囊フック, カプセルエキスパンダー, 眼内レンズ固定
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