背 景:ネコひっかき病はグラム陰性菌のBartonella henselaeによって引き起こされる疾患である.初期の感染では,眼,神経合併症を引き起こすことはまれとされている.今回我々は,ネコひっかき病より生じたと考えられる黄斑円孔網膜剝離の1症例を経験したので報告する.
症 例:12歳女児.左眼の視力低下を主訴に当院を紹介受診した.視力は左0.1(矯正不能),左眼の視神経乳頭の腫脹と黄斑円孔網膜剝離を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影検査にて左眼の視神経乳頭は過蛍光を呈していた.採血検査では抗Bartonella henselae IgG・IgM抗体陽性が確認されたため,ネコひっかき病と診断し,抗菌薬,副腎皮質ステロイドにて治療した.視神経網膜炎改善後,黄斑の硝子体牽引の所見は改善を認めたが網膜下液および黄斑円孔の改善は認めなかったため,硝子体手術を施行し円孔閉鎖が得られ視力が改善した.
結 論:ネコひっかき病に黄斑円孔網膜剝離が合併することはまれであるが,内科的加療の後に硝子体手術を行い,良好な経過を得ることができた.(日眼会誌122:460-465,2018)