論文抄録

第122巻第9号

臨床研究

慢性中心性漿液性脈絡網膜症に対する光線力学療法―治療成績と効果不良例に関する検討
速水 安紀1)2), 原 千佳子1), 沢 美喜1)3), 佐柳 香織1), 西田 幸二1)
1)大阪大学医学部眼科学教室
2)市立東大阪医療センター眼科
3)堺市立総合医療センター眼科

目 的:慢性中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)に対する低照射光線力学療法(rPDT)の治療成績,および反応不良・再発例について検討する.
対象と方法:rPDTを施行した慢性CSC 55例62眼を対象とし,視力変化,治療後に漿液性網膜剝離(SRD)が残存した反応不良例とその後SRDが再発した再発例の特徴,追加治療について後ろ向きに検討した.
結 果:治療前後の視力変化については,治療前視力1.0以上の17眼は全例(100%)で視力維持,0.5以上1.0未満の26眼では2眼(8%)で改善,24眼(92%)で維持,0.5未満の19眼では7眼(37%)で改善,8眼(42%)で維持,4眼(21%)で悪化がみられた.54眼(87%)で治療後にSRDの完全消失が得られた.8眼(13%)が反応不良,2眼(3%)で経過観察中に再発した.反応不良・再発群には副腎皮質ステロイド内服例が有意に多かった(p=0.044).反応不良8眼のうち4眼で追加rPDTを行い3眼でSRDが消失,残りの4眼でSRDが自然消退したのは1眼のみであった.SRDが残存した4眼のうち2眼では抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療を行い,2眼ともSRD消失を認めた.再発例のうち1眼で追加PDTにて改善,1眼で自然改善した.
結 論:慢性CSC症例に対するrPDTは有効であり,治療前視力良好症例も良好な視力を維持できた.反応不良例に対しては追加rPDTが有効であるが,抗VEGF治療が有効な症例もある.(日眼会誌122:693-699,2018)

キーワード
中心性漿液性脈絡網膜症, 光線力学療法, 反応不良, 再発, 抗血管内皮増殖因子治療
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〒565-0871 吹田市山田丘2-2 大阪大学医学部眼科学教室 原 千佳子
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