論文抄録

第123巻第1号

基礎研究

特集 学会原著:第122回日眼総会
Japanese Journal of Ophthalmology:計量書誌学的検討と被引用状況
大庭 紀雄, 丹沢 慶一, 佐藤 奈美
平成医療短期大学視機能療法専攻

目 的:Japanese Journal of Ophthalmologyの創刊以来の掲載論文を計量書誌学的に俯瞰するとともに被引用状況を検討する.
方 法:創刊の1957年から1976年まで冊子体から論文情報を,その後は2016年までデータベースWeb of Scienceを用いて論文情報と被引用数を収集した.併せて3,457論文(総説を含む)について計量書誌学的分析,被引用数分析を行った.創刊から60年間の諸事項の推移を知る目的で,前期(1957~1976年),中期(1977~1996年),後期(1997~2016年)と20年区分でデータを検討した.
結 果:年間掲載論文数は2000年まで増加して100件を超えた.その後は減少して2010年以後は50件ほどである.創刊から20年近くはほとんどが国内からの論文であったが,1970年代半ばから海外からの投稿が増えて2000年代になると全体の約30%を占めるまでに国際化が進んだ.最初はUSAからが多く,最近は東北アジア(South Korea, People's Republic of China, Taiwan)から発信される論文が多数を占めている.論文内容から研究方法を区分すると,基礎研究1,447件(41.9%),観察研究960件(27.8%),治療研究581件(16.8%),疫学研究469件(13.6%)である.研究方法の変遷は顕著であり,初期に多くを占めた基礎研究は次第に減少した.他方,臨床観察研究と治療研究は中期以後には相対的に多くの割合を占めるようになった.1977年から40年間の論文2,834件の被引用数を求めると,2,557件(90.2%)は少なくとも1回は引用されている.被引用数の度数分布は中央値4回の指数関数で近似される減衰傾向を示した.被引用数順位100位までを高頻度被引用論文として検討すると,研究内容は眼科の広い領域を含むが,アジアに多いBehçet病やポリープ状脈絡膜血管症の疫学,laser flare-cell meterによる房水検査法開発を扱った論文が多くを占めた.被引用数順位上位は塩瀬ら(1991年)による緑内障疫学調査に関する論文(被引用数311),澤ら(1988年)のlaser flare-cell meter開発に関する論文(被引用数254)である.
結 語:Japanese Journal of Ophthalmologyの創刊から60年を俯瞰すると,研究課題が基礎研究から臨床研究へ移行する傾向を示すとともに,海外からの寄稿がしだいに隆盛になって東北アジアを代表する国際誌として着実な歩みをたどっている.(日眼会誌123:11-23,2019)

キーワード
Japanese Journal of Ophthalmology, 計量書誌分析, 被引用数分析, 高頻度被引用論文
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