背 景:Acquired vitelliform lesions(AVLs)は両眼性に黄色の網膜下沈着物を生じる疾患であり,しばしば網膜色素上皮剝離(PED)を伴う.既報では,抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬療法が無効であり,最終的には視力低下を来すとされている.今回当院にてPEDを伴うAVLsと診断され,長期経過観察が可能であった6例7眼について検討する.
症 例:6例7眼の内訳は女性1例1眼,男性5例6眼,平均年齢74.0±4.5歳(平均値±標準偏差),平均経過観察期間は89±76か月である.7眼中4眼では光線力学療法または抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬(または両方)を施行した.そのうち2眼ではそれぞれ治療開始16か月,98か月後にPEDが退縮したが,1眼ではPEDは不変であり,さらに1眼では脈絡膜新生血管(CNV)が生じて病態が大きく変化した.治療せず経過観察していた3眼のうち1眼ではPEDの形態が徐々に変化したもののPEDの退縮はみられず,2眼ではPEDが退縮した.視力のlogarithmic minimum angle of resolution(logMAR)値の変化は初診時0.07±0.17,最終診察時0.35±0.13であり,全例で視力低下傾向にあった.
結 語:PEDを伴うAVLsは長期の経過でPEDが退縮する場合が多いが,治療効果は不明である.長期経過において視力予後不良であり,まれではあるがCNVの発生にも留意するべきである.(日眼会誌123:593-602,2019)