論文抄録

第123巻第5号

症例報告

ゾレドロン酸投与後に両眼の急性前部ぶどう膜炎を発症した1例
蓮見 由紀子1)2), 石原 麻美1), 翁長 正樹2), 飯島 康仁2), 水木 信久1)
1)横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教室
2)蒼風会追浜駅前眼科

背 景:ゾレドロン酸(Zoledronic acid)は,ビスフォスフォネート系製剤の一つであり,骨粗鬆症や,固形腫瘍の骨転移病変,悪性腫瘍の合併症としての高カルシウム血症などの治療に用いられる.今回我々は,ゾレドロン酸の点滴投与後,両眼に急性前部ぶどう膜炎を発症した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
症 例:77歳,女性.2017年11月14日,骨粗鬆症に対して近医内科でゾレドロン酸の点滴治療を受けた.3日目に,左眼の充血を自覚,点滴から6日目に充血と痛みの悪化のため追浜駅前眼科を受診した.視力は右(0.7),左(0.5),毛様充血を認め,角膜浮腫と角膜後面沈着物,前房内炎症細胞および隅角蓄膿がみられた.軽度の硝子体混濁を認めたが,眼底には異常はみられなかった.左眼にベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼による治療を開始した.7日目に,患者は右眼の毛様充血を自覚,前房内炎症細胞を認めた.両眼とも点眼加療にて消炎し,視力は改善した.点眼中止後も炎症の再燃はなかった.
結 語:本剤の副作用としてのぶどう膜炎の発症頻度は約1%との報告があるが,本邦での報告はほとんどない.眼科医および一次使用者は本剤の副作用としてぶどう膜炎を念頭に置く必要があると考えられた.(日眼会誌123:603-607,2019)

キーワード
ゾレドロン酸, 急性前部ぶどう膜炎, ビスフォスフォネート, 眼副作用
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