論文抄録

第123巻第5号

症例報告

両眼性黄斑円孔を合併したStargardt病の1例
杉山 麗, 森 隆史, 古田 実, 石龍 鉄樹
福島県立医科大学眼科学講座

背 景:Stargardt病は,若年発症,常染色体劣性形式を取る遺伝性網膜変性疾患である.壮年期発症のStargardt病で,両眼の黄斑円孔を合併した1症例を経験したので報告する.
症 例:57歳,女性.2004年当科初診時,視力は右(1.0),左(1.0),眼底検査で両眼中心窩の網膜色素上皮変性,両眼の黄斑部と周辺部に黄白色沈着物を認めた.フルオレセイン蛍光眼底造影では,黄斑萎縮に一致した過蛍光,脈絡膜背景蛍光の輝度低下を認めた.上記所見から,Stargardt病と診断した.2007年に撮影したspectral domain光干渉断層計では,両眼ともに中心窩でのellipsoid zoneの消失と,傍中心窩後部硝子体【剥】離を認めた.初診後7年間で両眼ともに中心窩外層障害が進行した後に,黄斑円孔を形成した.経過中,円孔周囲網膜に【嚢】胞形成はみられなかった.
結 論:黄斑円孔は網膜色素上皮変性により脆弱化した中心窩組織に,傍中心窩後部硝子体【剥】離に伴う牽引力が働き形成されるのではないかと推測された.(日眼会誌123:608-613,2019)

キーワード
Stargardt病, 黄斑円孔, 光干渉断層計
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