論文抄録

第123巻第7号

臨床研究

我が国の感染性ぶどう膜炎診断目的の眼内液polymerase chain reaction施行状況に関する実態調査
高瀬 博1), 中野 聡子2), 杉田 直3), 外園 千恵4), 後藤 浩5), 望月 學1)
1)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学
2)大分大学医学部眼科学教室
3)理化学研究所生命機能科学研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクト
4)京都府立医科大学大学院視覚機能視覚機能再生外科学
5)東京医科大学臨床医学系眼科学分野

目 的:感染性ぶどう膜炎に対する眼内液polymerase chain reaction(PCR)の施行状況の実態を明らかにする.
対象と方法:全国の大学病院,基幹研修施設,日本眼炎症学会と日本眼感染症学会の評議員が所属する計151施設を対象にアンケート調査を行い,2018年1月から同年6月までの期間のPCRの施行件数,そのうち単項目PCRと網羅的PCRそれぞれの自施設検査件数および外注検査件数を調べた.さらなる検討として,先進医療「難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)」を本調査の時点で施行している10施設について,2014年1月から2018年6月までの期間に先進医療として施行したPCRの件数,有効性,有害事象の有無を調査した.
結 果:アンケートを送付した151施設中131施設(回答率87%)と,先進医療を施行するすべての施設から回答を得た.感染性ぶどう膜炎に対する眼内液PCRは101施設(77%)で施行され,その7割は外注検査であった.6か月間のPCR施行件数は1,616件で,そのうち674件(42%)が網羅的PCRであった.先進医療は4年6か月間でウイルスPCRが409件,細菌・真菌PCRが112件施行され,ウイルスPCRの407例(99.5%),細菌・真菌PCRの全例で有効と評価された.有害事象の報告はなかった.
結 論:現在の我が国のぶどう膜炎診療において,感染症の診断または除外診断に眼内液PCRは重要な位置を占めると考えられる.(日眼会誌123:764-770,2019)

キーワード
感染性ぶどう膜炎, polymerase chain reaction(PCR), ヘルペスウイルス, 先進医療, 網羅的PCR
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〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学 高瀬 博
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