目 的:近視による屈折異常は弱視になりにくいとされる.一方で,幼少時から非常に強い近視を呈する先天性強度近視はまれである.今回,先天性強度近視における視力発達と予後について検討した.
対象と方法:対象は2008年1月から2016年1月までの8年間に当院初診になった小児のうち,6歳時点で両眼の屈折度数(等価球面)が6.0 D以上の強度近視,矯正視力が1.0に達しない症例で,最終診察時の年齢が6歳以上,2年以上経過観察できた10例20眼である.弱視治療は,調節麻痺薬を用いた屈折検査による遠方矯正眼鏡装用を基本とした.視力発達が不十分な不同視症例の場合には1日2~3時間程度の健眼遮閉を併用した.
結 果:治療開始年齢が若いほど視力発達は良好であった.また,治療開始時の近視屈折度数が上がるほど最終観察時の視力は不良であった.近視屈折度数が10.0 D以上の7例11眼のうち,3例4眼で経過中に網膜剝離が生じ,1例1眼で高度の網脈絡膜萎縮があった.
結 論:先天性強度近視の小児において,視力に影響する因子は治療開始年齢と屈折度数であると考えられた.6歳以下で6.0 D以上の近視症例を診た場合,早期に治療を開始することが有用であり,特に10.0 D以上の症例では定期的に眼底の器質的変化も確認することが必要である.(日眼会誌123:919-923,2019)