論文抄録

第124巻第10号

臨床研究

ぶどう膜悪性黒色腫の臨床像,治療と予後の検討
鈴木 茂伸1), 佐野 秀一1)2)
1)国立研究開発機構国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科
2)佐野眼科医院

目 的:ぶどう膜悪性黒色腫の臨床像,治療と予後を明らかにすること.
方 法:2004年4月から2019年3月までに当院を受診しぶどう膜悪性黒色腫と診断した285例を対象に,後ろ向き診療録調査を行った.
結 果:診断時年齢は平均56.7歳,同側の太田母斑が4例,他の悪性腫瘍合併が15例あった.初回治療は眼球摘出が103例,小線源治療が78例,炭素イオン線治療が38例,定位放射線治療が18例であった.眼球温存治療を行った症例の5年眼内無再発率は62.0%,5年眼球温存率は76.1%であった.治療により治療前の視力を維持できた症例は30.5%であった.5年疾患特異的生存率は87.1%,5年累積転移率は27.0%,転移発見後の1,2,5年生存率は79.7%,55.2%,46.4%であり,免疫チェックポイント阻害薬の治療例で長期生存がみられた.
結 論:眼球温存治療により76.1%の眼球が温存されたが,多くの眼球で視力は低下した.遠隔転移が5年の時点で27.0%の症例で生じたが,転移発見後の生存率は既報より良好であった.(日眼会誌124:765-775,2020)

キーワード
ぶどう膜悪性黒色腫, 小線源治療, 眼球温存率, 転移, 免疫チェックポイント阻害薬
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〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1 国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科 鈴木 茂伸
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