論文抄録

第124巻第10号

臨床研究

糖尿病黄斑浮腫に対して中心窩網膜厚を基準に導入期投与を行ったアフリベルセプト投与プロトコールの12か月成績
志村 雅彦1), 今関 誠1), 内海 卓也1), 本橋 良祐1), 安田 佳奈子1), 野間 英孝1), 後藤 浩2)
1)東京医科大学八王子医療センター眼科
2)東京医科大学臨床医学系眼科学分野

目 的:糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するアフリベルセプト治療について,導入期は浮腫が改善するまで必要時投与し,維持期は隔月投与とする新たなプロトコールを適用し,投与開始から12か月間の視機能予後を検討する.
方 法:中心窩網膜厚(CMT)が400 μm以上,視力がlogarithmic minimum angle of resolution(logMAR)値0.15~1.0の未治療の中心窩浮腫を含むDME患者49名49眼について,導入期はCMT<300 μmを得られるまでアフリベルセプトを毎月(最長6回)硝子体内投与し,その後,維持期は隔月投与を行った.評価項目は,投与開始から12か月後の視力改善度,視力改善度が0.3 logMAR以上変化した症例の割合,導入期のアフリベルセプト投与回数別の症例数,および12か月間の平均投与回数とした.
結 果:本プロトコール治療によって,12か月の平均視力改善度は0.17±0.24 logMAR(約8.5文字)の改善,また0.3 logMAR(15文字)以上の改善は30.6%(15例),増悪は4.1%(2例)で認められた.導入期に1回の投与でCMT<300 μmを得られた症例は18例(36.7%)であり,6回連続投与を要した症例は7例(14.3%)であった.12か月間の総投与回数は7.14±1.08回であった.
結 論:DMEに対しアフリベルセプトを導入期に必要時投与,維持期に隔月投与する治療プロトコールは視機能改善に有効であることが分かった.(日眼会誌124:794-801,2020)

キーワード
糖尿病黄斑浮腫, アフリベルセプト, 投与プロトコール, 視機能予後
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