目 的:ソフトコンタクトレンズ(SCL)へのアカントアメーバの付着は,アカントアメーバ角膜炎の発症に深く関わる.本研究はさまざまなSCLへのアカントアメーバの付着を評価するとともに,塩基性蛋白質であるポリLリジンによるSCLへのアカントアメーバの付着抑制効果を検討することにより,SCLへのアカントアメーバの付着メカニズムを明らかにすることである.
方 法:対象としたSCLは,定期交換用のハイドロゲルレンズ8種類およびシリコーンハイドロゲルレンズ10種類である.105/mLのAcanthamoeba polyphagaを含む溶液にポリLリジン(0,5,50,500 mg/L)を加え,SCLを振盪下で浸漬し,洗浄後に付着したアカントアメーバ数を計測した.
結 果:ハイドロゲルレンズに付着したアカントアメーバ密度は1/mm2未満であったが,シリコーンハイドロゲルレンズの中には100/mm2を超えるものがあった.ポリLリジンは濃度依存性に,アカントアメーバに障害を与え,凝集化させることで,SCLへの付着を抑制した.
結 論:ポリLリジンがSCLへのアカントアメーバ付着を抑制したことから,アカントアメーバ細胞表面の糖鎖の負の電荷がSCLへの付着機序の一つと考えられた.そして,この機序によりAcanthamoeba polyphagaが付着しやすいシリコーンハイドロゲルレンズが存在した.(日眼会誌124:317-323,2020)