論文抄録

第124巻第4号

基礎研究

学会原著
第123回日眼総会
ソフトコンタクトレンズへのアカントアメーバ付着に対するポリLリジンの抑制効果
高橋 尚子1), 加治 優一1), 石橋 康久2), 大鹿 哲郎1)
1)筑波大学医学医療系眼科
2)筑波病院

目 的:ソフトコンタクトレンズ(SCL)へのアカントアメーバの付着は,アカントアメーバ角膜炎の発症に深く関わる.本研究はさまざまなSCLへのアカントアメーバの付着を評価するとともに,塩基性蛋白質であるポリLリジンによるSCLへのアカントアメーバの付着抑制効果を検討することにより,SCLへのアカントアメーバの付着メカニズムを明らかにすることである.
方 法:対象としたSCLは,定期交換用のハイドロゲルレンズ8種類およびシリコーンハイドロゲルレンズ10種類である.105/mLのAcanthamoeba polyphagaを含む溶液にポリLリジン(0,5,50,500 mg/L)を加え,SCLを振盪下で浸漬し,洗浄後に付着したアカントアメーバ数を計測した.
結 果:ハイドロゲルレンズに付着したアカントアメーバ密度は1/mm2未満であったが,シリコーンハイドロゲルレンズの中には100/mm2を超えるものがあった.ポリLリジンは濃度依存性に,アカントアメーバに障害を与え,凝集化させることで,SCLへの付着を抑制した.
結 論:ポリLリジンがSCLへのアカントアメーバ付着を抑制したことから,アカントアメーバ細胞表面の糖鎖の負の電荷がSCLへの付着機序の一つと考えられた.そして,この機序によりAcanthamoeba polyphagaが付着しやすいシリコーンハイドロゲルレンズが存在した.(日眼会誌124:317-323,2020)

キーワード
アカントアメーバ角膜炎, ソフトコンタクトレンズ, シリコーンハイドロゲルレンズ, ポリLリジン
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