目 的:我々は,両眼黄斑円孔を合併した小口病の1例を経験し,硝子体手術前後の金箔様反射所見について若干の考察を加えて報告する.
症 例:81歳男性が右眼黄斑円孔の手術目的で受診した.両眼に金箔様反射を認め,小口病が疑われた.光干渉断層像では黄斑部鼻側で,視細胞内節外節接合部(IS/OS)と網膜色素上皮(RPE)の間隔が短縮し両者は明瞭に分離できなかった.術後黄斑円孔は閉鎖し,金箔様反射は残存した.1年半後,左眼にも黄斑円孔を発症し術後閉鎖したものの,術後5日目に裂孔原性網膜剝離を合併し再手術を行い,網膜は復位したが,IS/OSが消失した部位での金箔様反射は消失した.術後9か月で網膜剝離を認めなかった部分に金箔様反射が再度出現した.経過中,網膜電図にて陰性型が,遺伝子解析にてSAG遺伝子変異(c.926delA)がホモ接合で確認され小口病と診断された.
結 論:本症例で黄斑円孔術後においても金箔様反射が観察されたことから,その存在には後部硝子体膜や内境界膜の関与は低い可能性がある.一方,左眼網膜剝離の再手術後に金箔様反射は消失し,その後一部分で金箔様反射が再度出現したことから,RPEもしくは続発する網膜外層障害によって金箔様反射が消失し,その障害が軽度な領域で金箔様反射が再度出現した可能性が考えられるが,その詳細なメカニズムは未だ不明である.(日眼会誌124:402-409,2020)