目 的:全層角膜移植後の角膜感染症の発症背景と予後を検討する.
方 法:京都府立医科大学眼科およびバプテスト眼科クリニックにおいて,2003年1月1日から2012年12月31日までの10年間に全層角膜移植を施行した792眼を対象とし,角膜感染症の,①発症率,発症時年齢と発症時期,②起炎菌の種類,③発症時の副腎皮質ステロイド使用,④眼局所要因,⑤視力予後に関して,レトロスペクティブに検討を行った.
結 果:術後平均観察期間は6年8か月であり,23眼(2.9%)に角膜感染症を発症した.内訳は,細菌感染が11眼,真菌感染が12眼であった.細菌感染では薬剤耐性菌が最多で11眼中8眼(72.7%)に検出し,真菌感染ではCandida属が最多で12眼中6眼(50.0%)に検出した.眼局所要因は縫合糸関連が最多で23眼中18眼(78.3%)であった.感染治癒後に視力が低下する症例は真菌感染のほうが多かった.
結 論:全層角膜移植後の細菌感染,真菌感染はともに日和見感染症として発症していた.細菌感染は薬剤耐性菌が,真菌感染はCandida属が最多であった.細菌感染,真菌感染ともに,縫合糸関連が感染の眼局所因子としては最多であり,視力予後は真菌感染のほうが不良である.(日眼会誌124:484-493,2020)