論文抄録

第124巻第6号

臨床研究

回折型2焦点眼内レンズと焦点深度拡張型眼内レンズの摘出に至った症例の検討
高畠 隆, 高橋 真紀子
高畠西眼科

目 的:回折型2焦点眼内レンズ(IOL)であるTECNIS Multifocal(以下,2焦点IOL)と焦点深度拡張型IOLであるTECNIS Symfony(以下,EDOF IOL)を摘出した症例を,後ろ向きに比較検討する.
対象と方法:2017年6月から2019年5月までの間に,高畠西眼科で2焦点IOLを挿入した1,218例2,182眼とEDOF IOLを挿入した770例1,290眼を対象に,IOLの摘出交換が行われた症例を抽出し調査した.
結 果:2焦点IOLを摘出した症例は62例72眼,年齢63.2±7.5(平均値±標準偏差)歳,主な原因症状はwaxy vision 42眼(58.3%),グレア・ハロー22眼(30.6%)であった.EDOF IOLを摘出した症例は14例16眼,年齢65.6±8.3歳,原因症状はグレア・ハローが13眼(81.3%)で最も多く,waxy visionは4眼(25.0%)であった.摘出率は2焦点IOLが3.3%に対し,EDOF IOLは1.2%と有意に低かった(p<0.001).Waxy visionが原因で摘出に至った症例の全体に占める割合は,2焦点IOLが1.9%であったのに対し,EDOF IOLは0.3%で有意に少なかった(p<0.001).2焦点IOL,EDOF IOLともに摘出交換後は遠方矯正視力が有意に向上し(p<0.001,p=0.046),コントラスト感度が低下していた症例においてはコントラスト感度の改善を認めた(p<0.001,p=0.008).
結 論:EDOF IOLはコントラスト感度低下に起因するwaxy visionを生じにくく,2焦点IOLに比べ不適応症例の割合が少ない可能性が示唆された.(日眼会誌124:494-500,2020)

キーワード
多焦点眼内レンズ摘出, コントラスト感度, waxy vision
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