目 的:未熟児網膜症(ROP)瘢痕期における黄斑偏位の角度と距離を調べ,瘢痕の程度,眼位,増殖病変の局在との関連を検討すること.
対象と方法:2006年から2015年までの10年間に高知医療センターでROPと診断された402例のうち,眼底撮影が可能であった43例86眼を対象とした.眼底カメラを用いて座位で撮影し,得られた眼底写真で,乳頭-中心窩角度(DFA)および乳頭-中心窩距離(DFD)を計測した.全症例で瘢痕期分類での瘢痕の程度,眼位,増殖病変の局在を調べ,それぞれDFA値およびDFD値との関連を検討した.
結 果:対象の平均在胎週数は26.4±2.1週,平均出生体重は793.0±207.7 g,撮影時の平均年齢は6.4±2.4歳であった.瘢痕の程度別では,瘢痕期2度群のほうが瘢痕期1度群や自然治癒群よりDFA値が有意に大きかった(p<0.01).また,瘢痕期1度群および瘢痕期2度群のほうが自然治癒群よりDFD値が有意に大きかった(p<0.001).眼位別では内斜視群のほうが正位群よりDFA値が有意に大きかった(p<0.01).また,内斜視群のほうが正位群(p<0.01)および外斜視群(p<0.001)より有意にDFD値が大きく,正位群のほうが外斜視群より有意にDFD値が大きかった(p<0.01).増殖病変の局在別では,耳側と鼻側の両方に増殖病変がみられる群のほうが増殖病変なし群よりDFA値(p<0.01)およびDFD値(p<0.001)がともに有意に大きかった.
結 論:ROP瘢痕期では,瘢痕期2度群のほうが瘢痕期1度群や自然治癒群と比較してDFA値が有意に大きく,黄斑がより下方に偏位していた.(日眼会誌124:531-538,2020)