論文抄録

第124巻第9号

症例報告

滲出型加齢黄斑変性に対する多数回の抗血管内皮増殖因子薬治療を契機に発症した交感性眼炎の1例
古泉 英貴1)2), 長谷川 泰司1), 丸子 一朗1), 飯田 知弘1)
1)東京女子医科大学眼科学
2)琉球大学医学部眼科学講座

背 景:抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬治療は現在,滲出型加齢黄斑変性(AMD)の標準治療としての立場を確立している.今回,滲出型AMDに対する多数回の抗VEGF薬治療を契機として発症したと考えられる交感性眼炎の症例を経験したので報告する.
症 例:76歳男性.2か月前からの右眼視力低下を主訴に東京女子医科大学病院眼科を受診.右眼ポリープ状脈絡膜血管症の診断にてアフリベルセプト硝子体内注射(IVA)による治療を開始した.治療開始から3年6か月後に25回目の右眼IVAを施行,その1か月後に両眼視力低下を自覚したため予約外受診.両眼黄斑部に網膜剝離と脈絡膜の著明な肥厚がみられた.蛍光眼底造影検査で視神経乳頭と脈絡膜の炎症所見,全身検査で髄液細胞増多所見を認めた.眼所見および全身所見はVogt-小柳-原田病に合致するものであったが,先行する硝子体内注射の既往があり,交感性眼炎の診断となった.
結 論:滲出型AMDに対する多数回の抗VEGF薬治療の経過中に発症した交感性眼炎の症例を経験した.抗VEGF薬治療中に急な両眼視力低下を訴える症例では交感性眼炎の可能性も念頭に置く必要がある.(日眼会誌124:713-719,2020)

キーワード
交感性眼炎, Vogt-小柳-原田病, 加齢黄斑変性, 抗血管内皮増殖因子薬, 脈絡膜厚
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