背 景:フィンランド型家族性アミロイドーシスは角膜アミロイドーシスによる格子状角膜混濁を合併症に持つ常染色体優性遺伝性の疾患である.フィンランド型家族性アミロイドーシスは我が国では非常にまれであり,遺伝子検査で確定診断されたフィンランド型家族性アミロイドーシスに伴う角膜アミロイドーシスの詳細な報告は過去4家系のみである.今回,フィンランド型家族性アミロイドーシスに伴う角膜アミロイドーシスと診断した2家系を報告する.
症 例:家系1から症例1~症例3,家系2から症例4をゲルソリン遺伝子検査の結果よりフィンランド型家族性アミロイドーシスに伴う角膜アミロイドーシスと診断した.前眼部光干渉断層計所見から格子状角膜混濁は角膜実質浅層から中層の深さに存在した.格子状角膜混濁,神経障害を全例に認め,皮膚弛緩による眼瞼下垂を3例,腎障害を2例に認めた.神経障害は顔面神経麻痺と発汗低下が全例に認められた.ゲルソリン遺伝子検査ではGelsolin遺伝子変異c.640G>A(p.Asp214Asn)のヘテロ接合体が全例に認められ,本邦で過去に報告されていた変異と同じ変異であった.
結 論:格子状角膜混濁,仮面様顔貌,神経障害を同時に認める場合,フィンランド型家族性アミロイドーシスを念頭に置き遺伝子検査を検討することが診断に有用であると考えられた.(日眼会誌125:30-37,2021)