論文抄録

第125巻第1号

臨床研究

小児における遠見立体視の発達
林 麗如1), 林 振民1)2), 菅野 彩2), 鈴木 利根1), 町田 繁樹1)
1)獨協医科大学埼玉医療センター眼科
2)いきいき眼科クリニック

目 的:近見立体視の発達は幼少時に完成すると思われているが,遠見立体視の発達限界年齢の報告は少ない.今回,19歳以下の症例を対象に,遠見立体視と年齢との相関および近見立体視との相異を検討した.
方 法:矯正視力1.2以上かつ斜視のない6歳~19歳の症例770名を対象に,近見立体視はTitmus stereo test,遠見立体視はニデックSC-1600 Pola立体視チャートにより測定した.近見・遠見立体視の比較,年齢との相関を検討した.
結 果:6歳~14歳群において近見立体視に比べ,遠見立体視が有意に不良であった(p<0.01)が,15歳~19歳群において有意な差はみられなかった.年齢との相関については,6歳~14歳群において遠見立体視は年齢が上がるにつれ良好であった(r=-0.3,p<0.05)が,15歳~19歳群において有意な相関はみられなかった.6歳~14歳群において近見・遠見立体視の差に年齢との負の相関もみられた(r=-0.3,p<0.01).
結 論:遠見立体視と近見立体視との差は成長とともに小さくなることから,遠見立体視の発達は近見立体視に比べて遅れ,14歳ごろまで発達する可能性が示唆される.(日眼会誌125:9-15,2021)

キーワード
遠見立体視, 近見立体視, 年齢
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