論文抄録

第125巻第10号

臨床研究

瞬目方法の違いがフルオレセイン涙液層破壊時間とフルオレセイン破壊パターンに及ぼす影響
前原 紘基1), 横井 則彦2), 石龍 鉄樹1)
1)福島県立医科大学医学部眼科学講座
2)京都府立医科大学眼科学教室

目 的:瞬目方法の違いがフルオレセイン涙液層破壊時間(FBUT)とフルオレセイン破壊パターン(FBUP)に及ぼす影響について検討する.
対象と方法:ドライアイ研究会によるドライアイの診断基準(2016年度版)を満たす81例81眼〔男性11例11眼,女性70例70眼,年齢62.5±12.8歳(平均値±標準偏差)〕を対象とした.瞬目方法を,①自然閉瞼に続く自然開瞼(自然負荷),②軽い閉瞼に続く速い開瞼(軽負荷),③強い閉瞼に続く速い開瞼(強負荷)として,それぞれ開瞼維持を指示し,①~③の順で各3回ずつFBUTを測定しFBUPを評価した.
結 果:FBUTは自然負荷,軽負荷,強負荷で,それぞれ2.7±1.9,1.9±2.3,2.1±2.2秒であり,軽負荷や強負荷に比べて自然負荷で有意に長く(それぞれp<0.01),軽負荷と強負荷の間に有意差はみられなかった(p=0.15).FBUPの出現数(自然負荷;軽負荷;強負荷)はarea break(4;4;4),line break(LB)(4;7;2),spot break(SB)(1;7;5),dimple break(DB)(22;29;28),random break(RB)(49;23;33),SB+DB(0;7;6),LB+DB(1;1;1),SB+LB(0;3;2)であった.SBおよびSB+DBは軽負荷および強負荷で多く出現し,自然負荷で少なかった(p<0.01).RBは自然負荷で最も多く出現した(p<0.01).
結 論:強負荷ではマイボーム腺脂質の圧出や涙液貯留量の減少により,FBUTおよびFBUPが変化する可能性があることを考慮すると,ドライアイ診療における異常なFBUPの評価には,軽負荷,すなわち軽く閉瞼後速く開瞼させる方法が最も有効であると考えられた.(日眼会誌125:947-953,2021)

キーワード
ドライアイ, 瞬目, フルオレセイン涙液層破壊時間, フルオレセイン破壊パターン
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