目 的:網膜色素変性(RP)は現時点で有効な治療法のない難病で,新規の治療法開発が最も切望されている疾患の一つである.RPの基礎研究・治療研究を推進するために立ち上げた,RPおよびその類縁疾患に特化した患者レジストリである日本網膜色素変性レジストリプロジェクト(Japan Retinitis Pigmentosa Registry Project:JRPRP)の現状と登録されたデータの集計結果を報告する.
対象と方法:2018年7月~2020年3月までにJRPRPに登録されたRP患者1,817名の患者背景を検討した.
結 果:JRPRPに参加している25施設中13施設から登録があった.性別は男性851名,女性966名.年齢は55.0±17.4歳(平均値±標準偏差).病型の内訳は定型RP 1,563名,錐体杆体ジストロフィ62名,無色素性RP 59名,中心型・傍中心型RP 37名,クリスタリン網膜症18名,Usher症候群15名,コロイデレミア14名,その他34名,不明15名であった.遺伝形式は常染色体優性遺伝12.7%,常染色体劣性遺伝18.5%,伴性劣性遺伝1.7%,孤発型64.3%,不明2.9%であった.定型RPの病因遺伝子診断率は44.3%で,EYS遺伝子異常が最も多かった.さらに,EYS遺伝子異常の患者はほかの常染色体劣性遺伝の患者より視力が良好な傾向がみられた.
結 論:JRPRPに登録された患者の遺伝形式の割合は既報と同程度であった.同様に,病因遺伝子としてはEYS遺伝子異常が最も多いことが分かった.さらなる患者データの集積により,本邦のRP患者の特徴が明らかとなることが予想される.(日眼会誌125:425-430,2021)