論文抄録

第125巻第9号

臨床研究

アフリベルセプト治療抵抗性の滲出型加齢黄斑変性に対するブロルシズマブ切り替え後に生じた眼内炎症
大石 明生1), 前川 有紀1), 築城 英子1), 町田 祥1), 平田 佑妃1), 栗原 潤子2), 北岡 隆1)
1)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科・視覚科学分野
2)日本赤十字社長崎原爆病院眼科

目 的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)の治療として,既存の抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬を用いても十分な効果が得られない症例が一定数存在する.新たに開発されたブロルシズマブはアフリベルセプトより網膜厚を減少させる効果が高いことが示されており,上記のような治療抵抗例にも効果を示す可能性が考えられる.今回,アフリベルセプト治療抵抗性のAMDに対しブロルシズマブを投与したところ,高率に眼内炎症を生じたため結果を報告する.
対象と方法:既存の抗VEGF薬を直近4か月に3回以上投与されているが滲出性変化が残存していることからブロルシズマブに切り替えたAMD症例を対象に,投与1か月,3か月,6か月後の経過をみる前向き観察研究を計画した.
結 果:アフリベルセプトで治療していた4例5眼にブロルシズマブを投与したところ,3例3眼で眼内炎症を来した.3例ともブロルシズマブ投与の中止と,副腎皮質ステロイドの点眼およびTenon囊下注射の保存的な治療により炎症の消退が得られたが,1例で白内障が進行し手術を要した.一方,滲出性変化については,全例切り替え5か月後の時点で再燃を認めなかった.炎症のなかったもう1例も危険と利益のバランスを鑑み投与を中止した.
結 論:アフリベルセプト治療抵抗例に対するブロルシズマブ投与は滲出性変化を抑えられる可能性があるが,眼内炎症を来す場合がある.切り替えにあたっては慎重な症例の選択と十分な説明が必要である.(日眼会誌125:911-918,2021)

キーワード
ブロルシズマブ, 眼内炎症, 加齢黄斑変性
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〒852-8501 長崎市坂本1-7-1 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科・視覚科学分野 大石 明生
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