目 的:本邦ではまれな黄色斑眼底に類似したパターンジストロフィの1例を経験し,眼底のマルチモーダルイメージング所見ならびに遺伝子解析の結果について報告する.
症 例:46歳,女性.近医から両眼の眼底異常を指摘され当院を紹介受診した.自覚症状や家族歴はなく,視力は左右ともに1.2と良好であった.眼底所見として自発蛍光を発する黄白色斑が黄斑部周囲から血管アーケード付近そして視神経乳頭周囲にまでみられた.フルオレセイン蛍光眼底造影検査では,造影早期から後期にかけて過蛍光斑がみられ,dark choroidの所見は観察されなかった.網膜周辺部の変性巣や網膜血管の狭小化はみられなかった.光干渉断層計検査では黄斑部網膜の菲薄化はみられず,ellipsoid zone(EZ)は明瞭に検出され,黄白色斑の一部は網膜色素上皮からEZを越えて存在していた.Goldmann動的視野検査では正常視野を示し,全視野刺激網膜電図による杆体および錐体応答は正常振幅を示した.全エクソーム解析の結果,peripherin-2(PRPH2)やATP-binding cassette, sub-family A, member 4(ABCA4)遺伝子を含め疾患の原因となる遺伝子変異は検出されなかった.
結 論:本症例の眼底所見は,黄斑部異常を欠いていることを除いて,PRPH2遺伝子変異関連の黄色斑眼底に類似したパターンジストロフィと共通する点が多くみられた.遺伝子変異の同定はできなかったが,PRPH2遺伝子以外の原因による可能性は否定できなかった.(日眼会誌126:588-595,2022)