目 的:虹彩縫合による瞳孔形成を施行した多数症例の術後経過を検証し,安全性について検討すること.
対象と方法:2007~2021年に昭和大学藤が丘病院ならびに昭和大学藤が丘リハビリテーション病院にて長針を使用した虹彩縫合による瞳孔形成を施行し,6か月以上経過観察が可能であった26例26眼を対象とし,術前の瞳孔不整の形状,原因,術式,術後経過について後ろ向きに検討した.
結 果:年齢は68.1±13.5歳(平均値±標準偏差),男性20眼,女性6眼であり,術後観察期間は32.2±30.0か月であった.虹彩の形状は,部分欠損型が15眼,離断型が7眼,散瞳型が5眼であった.部分欠損・離断型の原因は医原性が13眼と最も多く,次いで外傷が7眼であった.散瞳型の主な原因は,外傷が3眼,緑内障発作が1眼であった.術式は,虹彩縫合単独が9眼,水晶体再建術+虹彩縫合が9眼,眼内レンズ縫着+虹彩縫合が7眼,毛様体縫合+虹彩縫合が1眼であった.縫合糸は全例で9-0もしくは10-0ポリプロピレン糸を使用した.術後,全例で虹彩の形状は改善し,散瞳型では羞明などの自覚症状が軽減した.術中合併症としては,長針の終端の接触によるDescemet膜剝離を1眼に生じたが,自然回復した.角膜内皮細胞減少率は12.5±15.4%であり,縫合糸の離開や慢性炎症は認めなかった.
結 論:虹彩縫合による瞳孔形成の経過は良好であり,比較的安全性の高い手技であると考えられた.(日眼会誌126:689-696,2022)