論文抄録

第127巻第12号

臨床研究

Myelin-oligodendrocyte glycoprotein抗体陽性視神経炎の副腎皮質ステロイド単独による維持療法の有用性
高井 康行1), 山上 明子1), 岩佐 真弓1), 井上 賢治1), 若倉 雅登1), 高橋 利幸2)3), 田中 恵子4)5)
1)井上眼科病院
2)東北大学医学部神経内科
3)国立病院機構米沢病院脳神経内科
4)新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センターモデル動物開発分野
5)福島県立医科大学寄附講座多発性硬化症治療学講座

目 的:Myelin-oligodendrocyte glycoprotein抗体陽性視神経炎(MOGON)は再発しやすいにもかかわらず,再発予防の戦略は明確ではない.MOGONのプレドニゾロン(PSL)単剤内服による維持療法の有用性と減量方法の検討を行ったため報告する.
対象と方法:MOGON患者25名を対象に維持療法の有用性について,診療録を用いた後方視的研究で評価した.初発後にPSL単剤による維持療法を半年以上継続した群(維持療法あり群)と半年以内に終了した群(維持療法なし群)に分類し,再発率を比較した.PSL減量方法の評価のため,初発後5年以内に起きた視神経炎発作(初発,再発を含む)38発作に関して,発作後2か月で10 mg以上かつ6か月で5 mg以上かつ8か月で1 mg以上とPSL内服を漸減した発作(slow tapering群)と,PSLを内服しない,あるいは発作後2か月で10 mg以下かつ/あるいは6か月で5 mg以下かつ/あるいは8か月で1 mg以下と急速に減量した発作(rapid tapering群)に分類し,再発割合を比較した.
結 果:初発時の年齢〔中央値(範囲)〕は46(20~72)歳,男性11例,女性14例,経過観察期間は62(6~140)か月であった.維持療法あり群(14例)では維持療法なし群(11例)よりも年間再発率が有意に減少した〔維持療法なし群vs. 維持療法あり群;0(0~0.49)/年vs. 0(0~0.32)/年,p<0.05〕.PSL減量方法の検討では,slow tapering群(16発作)はrapid tapering群(22発作)と比較して再発割合を減らすことができた(発作後の再発割合:slow tapering群25.0%,rapid tapering群63.6%;オッズ比0.20;95%信頼区間0.03~0.94,p<0.05).
結 論:MOGONでは初発時に十分な維持療法を行うことでその後の再発を減らすことができる可能性があり,特に発作後の緩徐なPSL減量が再発予防に有効と考えられる.(日眼会誌127:1103-1109,2023)

キーワード
視神経炎, myelin-oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体, 副腎皮質ステロイド
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〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-3 井上眼科病院 高井 康行
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