目 的:全国の大学医学部における医学生ならびに研修医・医局員に対するロービジョンケア(LVC)教育の実態を明らかにすること.
対象と方法:全国82大学を対象としたアンケート調査を実施した.
結 果:回答率は100%であった.LVC関連講義を行っていたのは35大学(42.7%)であった.臨床実習でLVC関連教育を行っていたのは60大学(73.2%)であった.講義も臨床実習も行っていない19大学(23.2%)のうち本調査をきっかけに今後LVC教育の組み入れを検討したいと回答したのは17大学(89.5%)であった.LVC教育を研修医に対して行っていたのは46大学(56.1%)であった.研修医にも他の医局員にもLVCに関する卒後教育を行っていないのは35大学(42.7%)で,このうち医学生へのLVCの卒前教育も行っていないのは13大学(15.9%)であった.ロービジョン外来を開設している大学および視覚障害者用補装具適合判定医師研修会(以下,医師研)修了者の勤務している大学では,そうではない大学と比べ,それぞれ有意にLVCの卒後教育が行われていた(いずれもp<0.01).
結 論:医学生への医学部教育としてLVC関連講義を行っている大学は半分に満たなかったが,臨床実習には7割以上で取り入れられていた.卒後教育としてLVC教育を行っている大学は約6割であった.LVC教育を行っていない大学を卒業しその母校に入局することで,LVC教育を受ける機会のない眼科医が増え続けることが推測された.LVCの卒前・卒後教育の推進に向けて,医師研などLVCに関する研修機会の提供と修了者を活用した教育体制の拡充が重要と思われた.(日眼会誌128:103-112,2024)