背 景:眼内リンパ腫の虹彩浸潤はきわめてまれである.リンパ腫が虹彩に浸潤し,腫瘤形成を来した続発眼内リンパ腫3例について,臨床経過を中心に報告する.
症 例:症例は男性1例,女性2例で,平均年齢は63歳であった.全例で眼内および中枢神経系以外の臓器(副腎,眼窩,頸部)におけるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の既往があり,眼病変の出現時にはいずれも寛解状態にあった.3例とも前房内炎症と硝子体混濁が,2例には網膜黄白色病変がみられ,いずれも診断目的に硝子体生検を施行した.1例のみ硝子体液中インターロイキン(IL)-10/IL-6比が1以上であったが,3例とも細胞診,フローサイトメトリー,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(遺伝子再構成)では眼内リンパ腫に特徴的な検査所見は得られなかった.2例に対しメトトレキサートの硝子体内注射(MTX-IV)を施行し,1例には副腎皮質ステロイドを中心とした治療を施行した.3例とも治療に反応したが,初回治療から1~4年後に虹彩腫瘤の再発がみられた.2例でMTX-IVを再開したが,1例はMTX-IVに抵抗性を示し,虹彩腫瘤の縮小はみられなかった.なお,改めて施行した全身検査で3例とも眼外病変がみられ,全身化学療法が行われた.
結 論:虹彩に腫瘤形成を来した続発眼内リンパ腫3例を経験した.全例で虹彩腫瘤の形成と同時に眼外病変を生じ,治療には全身化学療法を必要とした.(日眼会誌128:87-95,2024)