目 的:線維柱帯切除術周術期の抗菌薬使用および術中の術野洗浄に関する多施設アンケート調査を実施したので報告する.
対象と方法:日本緑内障学会評議員を中心に,1施設1名として計38名を対象に,線維柱帯切除術単独手術周術期の抗菌薬使用の有無とその使用期間,術中の術野洗浄の有無と使用製剤について,アンケート調査を実施した.抗菌薬に関しては術前点眼,周術期点滴,周術期内服について調査した.
結 果:計38施設38名から回答を得た.術前の抗菌薬点眼の使用率は84%であった.手術3日前から使用する施設が最多で63%,16%の施設では術前点眼を使用していなかった.周術期抗菌薬点滴の使用率は58%であった.術中の使用が最多で37%であった.周術期抗菌薬内服の使用率は45%であった.手術当日からの使用が最多で21%,翌日からが18%であった.術後の点眼を除いて抗菌薬をまったく使用していない施設は全体の5%で,術前の点眼,周術期の点滴および内服のすべてを行っている施設は24%であった.術中の術野洗浄に関しては68%の施設が行っており,58%がPA・ヨード,10%がポビドンヨード(イソジンⓇ)を使用していた.
結 論:線維柱帯切除術周術期の抗菌薬使用および術中の術野洗浄に関しては施設間で差があることが明らかとなった.現状では線維柱帯切除術周術期の抗菌薬予防投与に関して,明確な基準は存在しないため,適正な抗菌薬使用についてエビデンスを構築していく必要がある.(日眼会誌128:525-532,2024)