目 的:低加入度数分節トーリック眼内レンズの乱視矯正効果を検討し,異なるトーリックカリキュレーター(TC)の精度を比較した.
対象と方法:低加入度数分節トーリック眼内レンズを用い同一術者が小切開白内障手術を行った27例42眼を対象とした.術前角膜乱視と術後3か月自覚乱視で乱視矯正効果を検討した.光学式眼軸長測定装置のケラト値(以下,K値)を代入したメーカー提供TCとBarrett TCの術後乱視予測誤差(以下,予測誤差)を乱視の方向で分け解析し,K値を代入したBarrett TCと,K値,光学式眼軸長測定装置のTotal Keratometry(TK),前眼部光干渉断層計(OCT)のReal Power(RP)を代入したメーカー提供TCから,推奨スタイルと予測誤差をそれぞれ算出し,Barrett TCと,3種の角膜屈折力を用いたメーカー提供TCで比較した.
結 果:術後の残余乱視が0.50 D,1.00 D以内となる症例はそれぞれ81%,98%であった.K値を代入した場合,予測誤差の重心はBarrett TCの0.19 Dに比べ,メーカー提供TCでは0.59 Dと倒乱視側に大きく,絶対値はメーカー提供TCが有意に大きかった(p<0.0001).Barrett TCへのメーカー提供TCの推奨スタイルの一致率はK値36%,TK 54%,RP 31%であった.予測誤差の絶対値はBarrett TCと比し,メーカー提供TCでK値,RPを代入した場合に有意に大きかったが(それぞれp=0.0031,p<0.0001),TKを代入した場合は差がなかった.
結 論:低加入度数分節トーリック眼内レンズの乱視矯正効果は良好であった.メーカー提供TCはBarrett TCと比べ,予測誤差が大きく,倒乱視側にずれやすいが,TKを代入することにより改善する.(日眼会誌128:533-542,2024)