論文抄録

第128巻第7号

症例報告

強度近視と落屑緑内障を伴う眼に無症候性篩状板前組織周囲の剝離を認めた1例
庄司 拓平1)2), 菅野 順二1), 篠田 啓1)
1)埼玉医科大学眼科
2)小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック

目 的:篩状板前組織周辺に無症候性の大きな間隙を認めた強度近視を伴う落屑緑内障の1例を経験したので報告する.
症 例:70歳,男性.近医より白内障と落屑緑内障に対する手術目的として紹介された.初診時の視力は右0.05(0.8p),左0.04(0.7p)であり,両眼の白内障と左眼の落屑緑内障を認めた.右眼の水晶体再建術と左眼の水晶体再建術およびマイクロフック線維柱帯切開術を施行した.術後視力は右0.2(1.2),左0.15(1.2)と良好であった.左眼の眼底写真では乳頭周囲に限局したぶどう腫を認めた.光干渉断層計(OCT)や光干渉断層血管撮影(OCTA)によって,篩状板前組織の周辺に大きな間隙を認めた.Bスキャン画像ではborder tissueやscleral flange領域での神経線維の剝離所見が認められた.この間隙は乳頭周囲脈絡網膜萎縮の範囲に広く認めたが,Bruch膜開口部よりも深部に限局され,網膜分離や網膜剝離は認めなかった.この病態は既報とは異なる所見であった.
結 論:強度近視と落屑緑内障を伴う眼において,篩状板前組織の周辺あるいは乳頭周囲脈絡網膜萎縮内に間隙を認め,眼底写真・OCT・OCTA情報とこれらを統合したen face画像で確認した.篩状板前組織周囲に大きな間隙・剝離(scleral flange detachmentとborder tissue detachmentまたはprelaminar detachment)を認めるも視力が良好な1例であった.(日眼会誌128:543-551,2024)

キーワード
篩状板前組織周囲剝離, 強度近視, 落屑緑内障, prelaminar schisis, scleral flange detachment, border tissue detachment
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