論文抄録

第116巻第6号

総説

地球規模でのオンコセルカ症制圧へ向けて―その軌跡,課題,展望―
武居 敦英1), 平塚 義宗2), 小野 浩一1)3), 村上 晶1)
1)順天堂大学医学部眼科学講座WHO指定失明予防協力センター
2)国立保健医療科学院医療·福祉サービス研究部
3)順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター眼科

オンコセルカ症の感染者数は,2008年の時点で,アフリカ大陸全体において約2,572万人だと推計されているが,現在この数は着実に減少している.オンコセルカ症対策はここ30年間でその内容を大きく変えてきたが,大別すれば,1980年代まで主流であったベクター対策の時代,1990年代からの大手製薬会社の薬剤寄付に全面的に依存する“全住民へのivermectinの大規模投与”の時代,2005年頃よりアフリカの流行各国で普及し始めた“複数の風土病対策を統合して実施するIntegrated Approach”の時代となる.
オンコセルカ症の地球規模での制圧へ向けて,課題として,薬剤投与の住民カバー率向上,薬剤耐性出現への監視強化,抗仔虫薬に替わりうる抗成虫薬の開発,現地保健行政能力の改善などが挙げられる.制圧の実現性は,当該国保健省の継続的な政治的コミットメントにもかかっているが,現行のプログラムが現在のペースで続けば,近い将来のオンコセルカ症制圧は十分可能である.(日眼会誌116:547-553,2012)

キーワード
オンコセルカ症, 寄生虫病, アフリカ, ivermectin, integrated approach
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