目 的:前眼部形成不全の患児の出生直後における前眼部形態の変化を,超音波生体顕微鏡(UBM)と内視鏡を用いて観察した.
症 例:0歳,女児.出生直後から両眼の高眼圧と角膜中央部の混濁があった.角膜中央部は薄く混濁はリング状で,混濁部に血管侵入があった.徐々に角膜中央部の混濁は強くなり脂肪変性を生じた.UBMで観察すると出生時の角膜は一部二重前房様の形態で,徐々に1枚の充実した構造物に変化し全体は厚くなった.内視鏡で観察した角膜後面は赤色に染まっていたが,角膜が厚くなるにつれて白く変化した.
結 論:発育が不十分であった角膜実質に対し,生後に角膜発生に類似した角膜二次実質の形成が生じて,二重前房様の形態から1枚の充実した構造へ変化した.角膜後面の赤色膜は欠損部に侵入した新生血管からの出血,あるいは角膜後面に形成された血管膜であり,コラーゲン線維の増殖を促したのちに退縮したと推測した.(日眼会誌116:650-656,2012)