目的:大腿筋膜を使用した前頭筋吊り上げ術後に強度の兎眼と睫毛内反を来した3例についてその特徴と治療経過を報告する.
症例:3症例に共通する事項として,手術後長期経過した時期に兎眼および睫毛内反を来し当科へ紹介され受診した.術中の所見として,拘縮し周囲と癒着した大腿筋膜により瞼板が屈曲変形した状態で上方へ挙上されていたため,大腿筋膜の癒着を剥離し切除した.症例1には瘢痕化した眼輪筋下に鼠径部から採取した脂肪を移植した.症例2,3には屈曲変形した瞼板にナイロン糸でマットレス縫合を施行し平坦に矯正した.症例2には1年後に人工硬膜ゴアテックス®による吊り上げ術を追加した.症例3には瞼板と切離した大腿筋膜の間にゴアテックス®を縫合した.
結論:大腿筋膜による前頭筋吊り上げ術の合併症として筋膜の拘縮による兎眼と睫毛内反がみられることがある.術後長期的な経過観察を行い,合併症がみられた場合は適切な治療を行う必要がある.(日眼会誌117:132-138,2013)