論文抄録

第117巻第9号

総説

院内感染を起こす新型ヒトアデノウイルスのバイオインフォマティクス
青木 功喜1), 金子 久俊2)3), 北市 伸義4)5), 渡邉 日出海6), 石田 晋1)5), 大野 重昭5)
1)北海道大学大学院医学研究科眼科学分野
2)福島県立医科大学医学部眼科学講座
3)ほばら眼科
4)北海道医療大学個体差医療科学センター眼科学系
5)北海道大学大学院医学研究科炎症眼科学講座
6)北海道大学大学院情報科学研究科バイオインフォマティクス講座

流行性角結膜炎を引き起こすヒトアデノウイルス(HAdV)はすべてD種かE種である.バイオインフォマティクスの進歩により,その病態は宿主の免疫応答に関与するearly transcription unit 3(E3),標的器官に接着するファイバー·ノブ,細胞に侵入するためのペントンベースにあるRGD(Arg-Gly-Asp)モチーフ,中和決定基のヘキソンとその可変領域であるループ1と2という構造が関与することが明らかになってきた.サルからヒトへ種の壁を超えた感染が起こった可能性が指摘され(HAdV-52型),さらに近年はゲノムの組換えによりHAdV-53,-54,-56型などの新型が次々に出現している.バイオインフォマティクスを用いた全ゲノム系統解析をアデノウイルス研究に応用し,臨床と遺伝子の相互関連の解明に取り組み,新しい型の命名法,院内感染の病原体の特定,遺伝子構造と進化,流行の予測と治療薬の標的推定への利用が期待される.(日眼会誌117:721-726,2013)

キーワード
新型アデノウイルス, 院内感染, ヘキソン, ペントン, ファイバー
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