論文抄録

第117巻第9号

臨床研究

日韓糖尿病網膜症治療の現状についての比較調査
野崎 実穂1), 鈴間 潔2), 井上 真3), 川崎 良4), 喜田 照代5), 高村 佳弘6), 長岡 泰司7), 村上 智昭8), 吉田 茂生9); 日韓糖尿病網膜症研究グループ
1)名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学
2)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科眼科視覚科学
3)杏林大学医学部眼科学教室
4)山形大学医学部公衆衛生学教室
5)大阪医科大学眼科学教室
6)福井大学医学部眼科学教室
7)旭川医科大学眼科学教室
8)京都大学大学院医学研究科眼科学
9)九州大学大学院医学研究院眼科学分野

目 的:東アジアにおける大規模臨床試験の計画を見据えて,日韓の糖尿病網膜症治療の現状について比較調査を行う.
対象と方法:2012年6~7月に日本糖尿病眼学会会員および韓国網膜硝子体学会会員を対象にアンケートを行い,日本120名,韓国91名の回答を得た.アンケート作成には,American Society of Retina SpecialistsのPreferences and Trends(PAT)surveyを参考にした.
結 果:局所性黄斑浮腫に対する第一選択として最も多かった回答は日本で副腎皮質ステロイドテノン嚢下注射(22%),韓国で抗血管内皮増殖因子薬硝子体内注射(31%),PAT surveyで局所光凝固(68%)であった.血管新生緑内障に対する手術では日本は線維柱帯切除術(57%)が多かったが,韓国ではほとんどが緑内障インプラント手術(74%)であった.
結 論:日本,韓国間で糖尿病網膜症の治療方針に差異がみられた.今後両者にとって納得のいくプロトコールで,意義のある臨床研究デザインをよく考える必要があると思われた.(日眼会誌117:735-742,2013)

キーワード
糖尿病網膜症, Preferences and Trends(PAT)survey, 韓国, 日本, 国際多施設臨床研究
別刷請求先
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学 野崎 実穂