論文抄録

第118巻第11号

平成25年度日本眼科学会学術奨励賞 受賞論文総説

角膜内リンパ管の維持はマクロファージの存在に依存している
丸山 和一
東北大学医学部医学研究科神経感覚器病態学講座眼科学分野

角膜内の抗原提示細胞の存在や血管·リンパ管の存在は,角膜移植後の拒絶反応において危険因子であることが知られている.我々はすでにマクロファージのような抗原提示細胞が炎症期角膜リンパ管新生に重要であることを報告している.今回我々は,角膜に自然発生しているリンパ管がマクロファージの存在に依存しているかどうかを検討した.我々の考えを証明するために,角膜内のリンパ管を定常状態と炎症期の二群に分けて検討してみたところ,角膜内のリンパ管の維持と新生には炎症性マクロファージが必要であることが判明した.
以前からC57BL/6をホストにした角膜移植はBALB/cをホストにしたものと比較すると拒絶率が上昇することが知られていた.この両者の角膜を比較したところ,C57BL/6マウスの角膜内には定常状態でもリンパ管が発生しており,その周囲には炎症性マクロファージが存在していることが証明された.またマクロファージをクロードロネート含有リポソームで除去すると,リンパ管新生·維持も抑制されることが判明した.
マクロファージマーカー分子を欠損したマウスにおいてもリンパ管新生·維持が抑制されていたことから,角膜内炎症性マクロファージはリンパ管新生と維持に重要であることが判明した.(日眼会誌118:953-957,2014)

キーワード
角膜, 拒絶反応, リンパ管, マクロファージ
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