目 的:涙腺に原発する腺様嚢胞癌の経過を含めた臨床病理学的特徴を明らかにする.
対象と方法:東京医科大学眼科で涙腺腺様嚢胞癌と診断された10例について,患者背景,TNM分類,治療,病理組織学的所見,および経過を検討した.
結 果:症例は男性6例,女性4例で,平均年齢は49.5歳であった.10例中,遠隔転移は4例(40%),局所再発は5例(50%)にみられた.最終的に3例(30%)が死亡あるいは緩和医療へと移行し,Kaplan-Meier法による5年生存率は55.5%であった.TNM分類でT3以上および病理組織学的に充実型を示した症例の転帰が不良であった.また,4例に対して重粒子線治療が行われたが,そのうち2例が死亡あるいは緩和医療へと進んだ.
結 論:涙腺腺様嚢胞癌では,TNM分類と組織型が予後に関係する可能性がある.また,重粒子線治療を含めた治療を行ったが,転帰は不良であった.(日眼会誌118:963-967,2014)