目 的:美容整形目的で鼻根および鼻背にヒアルロン酸を注射後,眼動脈閉塞を来し失明に至った1例を経験したので報告する.
症 例:20歳,女性.美容整形外科にて鼻根および鼻背にヒアルロン酸0.7 mlを注射した直後より,右視力障害,後頭部痛,気分不快,両腕の麻痺を訴えた.同部位へヒアルロニダーゼを注入したが改善しなかったため,千葉大学病院救急部へ搬送された.当院受診時,右眼の直接·間接対光反射は消失,瞳孔は散大,光覚は消失し,眼底全体に及ぶ網膜の白濁浮腫を認めた.頭部CTで頭蓋内病変はみられなかった.フルオレセイン蛍光眼底造影では網膜·脈絡膜血流は完全に途絶しており,網膜電図は消失していた.右眼動脈閉塞と診断し,眼球マッサージ,ウロキナーゼ点滴,高圧酸素療法を開始したが,視力回復は得られなかった.
結 論:隆鼻目的のヒアルロン酸注射では,重篤な合併症に留意すべきである.(日眼会誌118:783-787,2014)