論文抄録

第119巻第11号

臨床研究

低濃度アトロピン点眼の副作用について
西山 友貴1), 森山 無価2), 深町 雅子1), 内田 亜梨紗1), 宮後 宏美1), 倉田 あゆみ1), 所 敬1), 大野 京子1)
1)東京医科歯科大学眼科学教室
2)久喜総合病院眼科

目 的:強度近視になると重篤な視力障害を来すため,近視の進行予防は重要である.近年,シンガポールから低濃度アトロピン点眼による近視進行予防の良好な結果が報告されている.我々は日本人学童を対象に低濃度アトロピンによる近視進行予防の研究を始めるに先立ち,その副作用について検討し報告する.
対象と方法:6~12歳までの学童16名.屈折値,近見・遠見視力,調節力,瞳孔径を測定した後,0.01%のアトロピンを就寝前に2週間点眼させた.その後,点眼前と同様の検査を行い,全身・眼局所の副作用および自覚症状の変化についても調査した.
結 果:屈折値,近見・遠見視力には有意な変化を認めなかった.調節力は平均1.50 D低下(p<0.01)し,瞳孔径は平均0.7 mm散大(p<0.0001)したが,自覚症状の訴えは軽微であった.重篤な全身・眼局所の副作用は認められなかった.
結 論:低濃度アトロピン点眼の副作用は軽微で実生活に影響を与える程度ではなく,継続使用は可能と考えられた.(日眼会誌119:812-816, 2015)

キーワード
近視, 予防, アトロピン
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〒113-8519 東京都文京区湯島1-5-45 東京医科歯科大学医学部附属病院眼科 西山 友貴
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