論文抄録

第119巻第2号

症例報告

うつむき位超音波生体顕微鏡検査を施行したレーザー虹彩切開術後に角膜内皮細胞が減少しているプラトー虹彩の2症例
今井 和行1), 澤田 英子2), 福地 健郎3)
1)慈光会今井眼科医院
2)さわだ眼科クリニック
3)新潟大学大学院医歯学総合研究科生体機能調節医学専攻感覚統合医学講座視覚病態学分野

背 景:レーザー虹彩切開術(laser iridotomy:LI)術後の水疱性角膜症発症の原因の一つとして,虹彩の角膜内皮への接触による機械的傷害の可能性を報告する.
症 例:両眼のLIを施行後に片眼性に大きく角膜内皮細胞減少を来したプラトー虹彩形状の2症例に,8方向の仰臥位,うつむき位超音波生体顕微鏡検査と9方向角膜内皮細胞検査を施行した.また,白内障手術を施行して経過観察した.
この角膜内皮細胞が減少した2眼は,下側あるいは鼻下側で角膜内皮細胞が特に著明に減少していた.うつむき位超音波生体顕微鏡検査で,同部位においてプラトー虹彩の屈曲部がSchwalbe線より高位で角膜へ接触していた.白内障手術の約2年後の9方向角膜内皮細胞検査では,2眼ともに虹彩の接触が認められなくなった下方の角膜内皮細胞数はやや増加し,他の部位は減少していた.それ以後,角膜内皮細胞の減少は停止した.
結 論:LIを施行したプラトー虹彩形状眼の角膜内皮細胞減少は,虹彩と角膜内皮の接触が一因の可能性がある.(日眼会誌119:68-76,2015)

キーワード
超音波生体顕微鏡, うつむき, プラトー虹彩, レーザー虹彩切開術, 水疱性角膜症
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